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2011年6月

ウォール・ストリート・ジャーナル 日本版 より

【社説】小沢主導の政界再編への期待
2011年 6月 3日 

日本の菅直人政権に対する野党の不信任決議案は2日、293対152の大差で否決された。この結果は一見、菅首相の圧勝にみえる。だが、この国ではよくあることだが、その実は全く異なり、菅首相を「勝利者」と呼ぶには程遠い決着だ。東日本大震災の復興にめどがつくと思われる2、3カ月のうちには退陣することを表明した上での不信任案否決だからだ。

 当初不信任案に賛成して首相を引きずりおろそうとしていた与党・民主党議員を土壇場で思いとどまらせたこの退陣表明の裏でどんな取引があったのか。それが表に出て来るには、まだしばらく時間がかかるであろうし、同時にそれは強力なリーダーが必要なこの試練のときに、先の見えない不確実な時間が続くことを意味している。

 与党・民主党内の反菅勢力が野党に協力して不信任決議を可決させるのに十分な人数を確保していたかは、今となってはわからない。採決前夜の票読みでは確率は五分五分だったようだ。だがいずれにせよこの日に不信任案を通して退陣までに追い込むまでの必要はなかった。調査機関ピューの最近の世論調査では、日本人の79%が首相の震災対応をお粗末とは感じてはいるものの、大半の国民がこの国難を顧みずに繰り広げられる民主党内の権力闘争を苦々しく思い、当面は菅首相の続投を容認していたからだ。

 菅政権がここ数カ月で向き合う最大の試練は、実は震災復興ではない。その震災対応も含めた政府活動を担保する補正予算や予算関連法案を国会で成立させることこそ最重要課題なのだ。米国政府同様、日本政府も借金枠の上限ぎりぎりまで来ている。様々な社会保障政策を見直さなければ、この膨大な政府債務はいずれ制御不能になる。

 31日に米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスが日本の国債格付けを引き下げる方向で見直すと発表したのも、財政改革の進展がみられないことと、低い経済成長見通しが原因だ。それはつまり、日本の政治システムが末期の機能不全に陥っているとの認識の表れなのだ。
 
 この停滞を打破するのに日本がより強力な指導者を見付けることは喫緊の課題だ。その候補の一人は民主党の小沢一郎元代表かもしれない。長く首相候補とされながら、いまだ首相にはなっておらず、また彼の育てた有力政治家の誰もが首相職には就いていない。しかし小沢氏のただならぬ力は、今年初めに政治資金スキャンダルで起訴され、昨年9月には民主党代表選で菅首相追い落としに失敗したにもかかわらず、その影響力を保っていることをみれば明らかだ。最大野党・自民党の谷垣禎一総裁は今週に入り、民主党・小沢グループとの連立政権の可能性を排除しないとも受け取れる発言を行った。過去の自民党と小沢氏の怨念を考えれば驚くばかりだ。

 国民世論が小沢氏を嫌っているのは紛れもない。ここでこの政治家の嫌疑について何らかの法的免責を与えれば大きな物議を醸すことは必定だ。しかし小沢氏が自民党と袂(たもと)を分かつことになった彼の長年にわたる政治信条――利益供与型政治の改革へのたゆまぬ努力、官僚支配の打破――を考えると、その力は重要だ。もし小沢氏が民主、自民両党の改革支持勢力を束ねることができれば、小さな政府と経済成長の促進政策への国民的コンセンサスを形成することも可能になるかもしれない。

 現実には、ムーディーズや他の政治評論家が予測するように、また精彩に欠けた別の政治家が民主党政権で首相になり、停滞が続く可能性は高いだろう。とはいえ、この国の債務問題がいよいよ危機に近づいている現在、政治を密室から解き放ち、国民の前でしっかり政策論議を進めることのできるリーダーのいち早い出現が待たれる。

※ ウォールストリート・ジャーナル(英称:The Wall Street Journal、WSJ)は、ニューヨークで発行される国際的な影響力を持つ日刊新聞である。長年にわたり、アメリカ合衆国内での発行部数第1位を占めてきたが、最近ではUSAトゥデイ(211万部)に次ぐ第2位(208万部)であった[1][2]。しかし、昨今の新聞不況によりUSAトゥデイが部数を減らしたため、2009年ウォールストリート・ジャーナルが再び首位に返り咲いた[3]。ニューズ・コーポレーションの子会社であるダウ・ジョーンズ社が発行する。保守系・共和党寄り。

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